産卵に来るアゲハチョウ達

家の庭に植えた金柑に毎年アゲハが産卵に来るのだが、庭の片隅にぽつんと植えられた目立たない小さな金柑を良く見つけて集まって来るものだといつも感心していた。たぶん蝶からすると苦も無く捜し当てているのかもしれない。

これが毎年のことで最近までさほど興味を持って見る事もなかったのだが、家人がある日、どうした風の吹き回しだか葉に付いたアゲハの幼虫がムーミンみたいで可愛いと言い出した。いままで虫なんぞに感心を持った事など全く無かったのである。これは実に興味深いことで原因は全くもって分からない。

そして家人による観察が始まったのだが幼虫の失踪事件が度々おこり、そのつど一緒に金柑の枝や葉を捜索する羽目になったのである。最初、目撃はしていないのだが殆ど鳥さんが食べているものだと予想していた。しかし、家人が暇に任せて観察するも、鳥さんが飛来することは殆ど無いという。
その後、悲鳴とともに犯虫が判明するまでさほど日は要さなかった、カマキリが幼虫を捕獲し食べていたのだ。まだ大きくないカマキリも1齢や2齢幼虫を餌食にし、秋も近づくと巨大なカマキリが出現する。どうやら家の環境ではカマキリが一番の捕食者であるようだ。斯くしてカマキリは悪役となった。

黙って見ている訳も無く、家人による幼虫達の保護が始まった。庭の生態系とは大げさかも知れないが、これに対してどんな影響が有るのか無いのか良く分からない。だが当面、雄大大自然にさほど影響は無いだろう(笑)



産卵に来たナガサキアゲハ、枝に卵を付けている。観察していると実に器用に飛びまわり狭い枝の間に回りこみ産卵しているのが分かる。葉に産卵するものと枝や幹に産卵するものがいるようだ。


こんな感じで卵が付いているが、ナガサキアゲハは枝や幹に産卵しているのを良く目撃する。クロアゲハは葉に産卵するようだが枝などにすることもある。どちらの種もその時の気分なのか?


2齢幼虫だが種類は良く分からない。鳥のフンに擬態しているようだ。


こちらはクロアゲハの5齢幼虫(終齢)、側面にある模様が目のように見え、これが「ムーミンに似ている」の由来だろう。
大きいものは5-6㎝位になる。順調に行くと次は蛹化して羽化。


こんなところで蛹になった。
保護した幼虫は室内の鉢植えの金柑で大きくなるのだが、蛹化が近づくと蛹化場所を求めてあちこちと移動を始める。ナガサキアゲハはそれほど移動するものはいないが、クロアゲハは場所選びにうるさく、中々場所が決まらない。


ここにも、、、無事羽化し残ったクロアゲハの蛹殻。


羽化して半日ほど経過したクロアゲハの雌。羽化してから翅が固まるまで飛ばないのだが、個体差とか羽化時の温度もあるのか3時間位で飛び始めるものや、半日掛かるのもいる。羽化の時間帯は早朝から正午近くまでが大部分だが、さらに遅い時間もある。これは室内で飼育した場合で自然ものがどうなのか不明。この個体はこの後すぐに野外へ飛び立った。


庭の金柑で綺麗に羽化したナミアゲハナミアゲハは新芽(新しい葉)に産卵するものが多く、枝や幹に産卵する場面は見た事がない。
庭の金柑にはクロアゲハ、ナガサキアゲハナミアゲハの3種が来る。


室内を飛び始めたナガサキアゲハの雄。この種は北へ分布を広げていることが知られている。家は関東でナガサキアゲハのほぼ北限とされている地域だが、近年はクロアゲハよりも多いのでないかと思えるくらい増えてきた。中には南方に多いとされる翅がかなり白化した個体も見かける。南方系のアゲハが北に分布を広げているのは確かなようだ。
その他、家の近所で見られるアゲハの仲間は、ジャコウアゲハ、カラスアゲハ、キアゲハ、アオスジアゲハなど。